文章が書けない人

彼は文章がかけなくなった。書いた文章は何も含んでいなかったことを知ってしまったのだ。それはどこかで見た文章であり、複製されたものであった。
空っぽの文章はただそれを繰り返すだけだった。
彼の書く文は自己弁明を含むようになっていった。メタ言及によって何が生まれるということも無いのに。
いつも自分がやっていることは規則通りで、なにも生みはしないのだ。
書いてやった。彼は焦っていた。何だって書いてやる。
そんな奴は××こいて寝ていろ。そんな声が頭に響く。
しかし、その文章は×で埋まっていった。
××なんて言葉はとても口にできなかった。×××なんていった日には×でも×うんじゃないか。××なんていえる人はどうかしている。
目の前には真っ白な紙が置いてある。隠れたくなった。だが、隠れたところで埋まりはしないのだ。書く文はあいかわらず無意味な繰り返しである。
ただのインクの浸みではないか。罰点で消してしまえ。
そうして彼は屑篭に丸めて投げ入れた。その途端彼は走り出した。そのまま行って、見えなくなった。彼の行方は誰も知らない。